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【老朽化マンションの建替え】
マンションが修繕では追い付かないほど老朽化し、住民や周辺に対する安全も危惧されるほどになった場合、マンションの建て替えを検討する必要が出てきます。
現在の法律では、マンションの建替えには「組合員の5分の4の賛成」が必要です。
が、これはかなり厳しい要件です。
なぜなら、建替えに係る費用は、一戸あたり2 〜3000万円にも上ります。これに、解体費用や建替え中の仮住まいの費用などを併せれば、その金額は更に膨れ上がります。
建替えを視野に毎月適正な修繕積立金を積み立ててあり、それだけの費用が準備できていれば問題ありません。 ですが、「積立が足りないので、建替え費用を準備してください」と言われて、全戸がそのとおりにできるでしょうか?
長年住み慣れた方、高齢の方には特に敬遠されがちです。
そのため、容易に賛成できないという方も多く、建替え決議が困難になります。しかしそうして放置しても、マンションはどんどん老朽化する一方です。
これらは現実に今、問題になりつつあることです。
古くなったマンションだけの問題ではありません。新築のうちは建替えまで視野に入れることは難しいでしょうが、いずれ起こります。そのときになって慌てないためにも、すべてのマンションで、早めに対策を講じておくことが大切です。
【建替えは避けられない…でも先延ばしはできる】
大規模修繕の項でもお伝えしましたが、マンションの老朽化は避けられなくとも、老朽化の速度を遅らせることは可能です。
それは建替えについても同じです。老朽化を遅らせることは、建替え時期を遅らせる、つまりマンションの寿命を延ばすことにつながります。
最近、大規模修繕の延命治療ともいえる技法が少しずつ話題に上がるようになってきました。その方法は大きく分けて2つ。
@建物診断を行い、未だ修繕を行わなくて良い部分の修繕を先に延ばす。
修繕周期表の通りに修繕工事は行わなければならないのでしょうか?といった発想に基づくものです。当然、周期表は目安であり、マンション毎にその特性に応じて劣化具合も異なってきます。海沿いのマンションだと塩害があったり、山肌のマンションだと湿気が高かったり、ビル密集地だと紫外線等の影響も少なく思ったよりも劣化が進んでいなかったり…それぞれの特性を踏まえて、診断の結果12年目に行う予定だった工事を15年目に延期するといった具合です。
A高耐久性の材料を使って大規模修繕工事を行う。
実際に大規模修繕を実施したマンションで行われていることですが、その修繕の際に少々金額は高くても高耐久性の材料を使用して、次の大規模修繕を先延ばしにするといった方法です。短期的な収支だけでなく、長期的な収支に視野を置いた発想と言えます。
また、この発送と同様に非常にメンテナンスコストのかかる機械式駐車場を撤廃して、近隣に駐車場用地を求めたというマンションもあります。これも、長期にわたって機械式駐車場の修繕を行うよりも、駐車場用地を購入した方が先々は得になると判断した結果だと言えます。
以上、2つのケースですが、実際に活用する際には建物診断や収支シミュレーションなど、専門家の判断を仰いで行ってください。
【マンションの寿命は何年?】
財務省例によるマンションの減価償却の期間(法令上、マンションの価値が全くなくなるとみなされるまでの期間)は47年です(元は60年とされていた時代もありますので、60年と思われた方もいらっしゃるかもしれません)。ではマンションの寿命は47年かといえば、そうではありません。(「
マンションを修繕する」の項でも少し述べています。)
「軍艦島」の愛称で有名な長崎のマンション群は1916年設立、今から100年前の建物です。無人になったのが1974年、以来40年以上手つかずで、海のど真ん中で潮風にさらされていても、躯体はしっかりと残っています。きちんと作られたマンションは強いのです。
問題は100年後も人が住める状態にあるか否か、です。
【長寿の秘訣は、日々のメンテナンスの積み重ね】
例えば100戸あるマンションが、
@適切な大規模修繕を定期的に行い、100年間建替えが不要だった場合、
A60年で建替えが必要になった場合
に係る費用を、ざっと計算してみると…
@維持管理+改良費用(バリアフリー、グレードアップ等)
100年間で20億円
1戸当たりの負担額 約17,000円/月
A維持管理+建替え費用(解体料、引越代、建替え中の借家代、新築費用)
100年間で37億円
1戸あたりの負担額 約51,400円/月
と予想されます。
大規模修繕を適切に行っていくほうが、断然おトクですね。
もちろん、大規模修繕を行ったからといって、建替え不要となるわけではありません。それに災害など、老朽化以外で建替えが必要になる場合もあります。
ですが、日々のメンテナンスで建替えを避けられるのであれば、それに越したことはありません。
マンションは一世代で終わりではありません。そこを実家として暮らした次の世代に、受け継いでいけるものです。
日々のメンテナンス、適切な積立金といった日頃の準備が、マンションの明るい将来を作っていくのです。